6月20日 空は明るいが、曇りときどき小雨。薄寒。

 いやはや、今書き始めて吃驚したのだが、なんとほぼ2週間書いていなかった。実は、この週末から今日まで、風邪っぴきで家で寝込んでいたのだが、そうだったのか、風邪ひいた理由はこれだったのだ。調子良いとすぐ働き過ぎるんだな、俺は。


 6月に入ってすぐ、友人のO飛行士が美術館に訪ねてきて、しまってあった、「放射冷却する停車場より」という題の大きな彫刻(1m×1m×2m)を彼の家に引き取って行ってくれた。ありがたい。彫刻家は、このあたりが大変なのだ。枠からはずして畳んで重ねてしまっておくいうわけにはいかない。飾れる庭を持つ友だちは有難い。5日から始まった1週間は、新たに始まった25周年記念拡大常設展第2部をどのように教育普及で扱うかをまとめるので過ぎた。1期目は、時間軸が中心だったので、なれたもんだと何ごともなく過ぎたが、今期は、ひとつひとつの作品の読みとりの面白さ奥深さが展開される。読み取りは、1人ごとに異なるので、そこを確認し、大切だと思う所から始めなければ始まらない。多分、日本で鑑賞の「授業」をする時に、最も大変なのは、ここの所なのではないかと、僕は感じている。教育普及部の同僚の大島君とも話し合って、大分困ったが、困ったということをそのまま使って、お話を展開することにした。
 12日月曜の休みに、前に書いた動物病院跡地での美術展のための草刈りをみんなとした後、大学で講義。草刈り機を友人から借りていたので、楽勝だとタカをくくっていたが、御存じの方は御存じの通り、草刈りは、ある特殊な作業なのであって、楽勝なんかないのであった。いやはや。その日の午後遅く大学の授業。
 明くる13日は、朝から秋保湯本児童館に出向いて、就園前の人たちとお母さんの会で、みんなで穴掘り。特別に、何か子供のための遊びを勉強して、してあげるのではなく、普段の生活の中から、その人が何に興味を持つのかを丁寧に見つけだして一緒に遊ぶための練習。園庭に、大きな穴を、大人がスコップで一生懸命掘ってみせると、大きなスプーンやおたまを持った小さな人たちがそこに少しずつ混ざって来る。混ざってきはじめたら、大人はそっと穴から上がって、彼らを観察する。ある時期が来たら、その穴に、ホースで水を入れる。できたら、少し離れた所から川を作って流すのが望ましい。と言うような作業。すごく面白いよ。大人が、張り切っちゃうんだよなあ。冷静に、子供といることを楽しんで、というあたりの塩梅が難しい。その日の午後、県教育研修センターの小学校の先生達のための鑑賞の研修を、美術館の展覧会を使って。
 その次の日は、いつも来ている愛児幼稚園の年少の人たちとの、極基礎的な美術館探検の活動。20年ほど前、この幼稚園のこの年令の人たちと、恐る恐る、しかし恐れを知らない若者の時代だったので大胆に、させてもらった活動。その活動の積み重ねから、美術館探検が始められた幼稚園なので、ぼくにとっては、いまだに大切で特別な人たち。素直に育てられている小さい人たちには、嘘やごまかしが通じないので、毎回自分の点検をせざるを得ない。いやはや。
 で、木曜日の午後4時45分、うっすらと、喉の奥が腫れてきた感じがして、その夜、風邪をひいた。金曜はちょうど振り替えの休みだったので、その日のうちに直そうと思っていたが、そううまくは行かない。今日まで、ほぼ寝ている。いやはや、本当に眠れるので、本当に寝ていた。大分よくなってきた感じだったので、昨日の大学の授業は行った。美術館で会おうと言っておいて、迷惑をかけた人がいたようだ、ごめんなさい。偶然父の日なんかと重なって、下の娘が孫とともに家に泊まりに来ていた。本当に、助かったよ、ありがとう。 
 大学の授業第7回目。6月5日。創作折り紙。3人にひとつずつ、裏の林でその日に拾った「まつかさ」を配る。20年ほど昔、美術館で、その当時、日本一の誉れ高かった折り紙名人を呼んで折り紙教室を行った。それに参加した4歳の娘が、小さい手で大切に持って見せに来たものは、僕にはどうみてもくしゃくしゃにまるめた紙にしか見えない「折り紙」だった。「おう、できたか。で、これは何?」「石!」その時の彼女の自身に満ちた、誇り高き、キラキラした、目。と言うのが、僕の折り紙の原点で、そこを、みんなと共有したい。B5の紙を配るので、各自、松ぼっくりを折りなさい。切れ目を入れたり、切ったりしないこと。きちんと折ること。誰に聞かれても、これが、私の松ぼっくりだ、文句あっか、となったら、出来上がり。(携帯の写真で記録したら)紙を平に戻して、折れ目を、山折実線、谷折破線で、書いて提出。という作業。
 授業第8回。6月12日。初めに、この授業で、創造力はついてきてきてるとは思うが、幼稚園とかに行ったら、やっぱり可愛いウサギさんとかを描く力がいるんではないかという質問に答えて、ウサギの描き方。ウサギの後ろ足を描いてみて。見たことがなくても、知っていることを冷静に使えば、たとえば、このような辺りまでは、誰でも描ける。そこから先は、何を可愛いと教育したいのかの問題になる。どういう大人にしたいのかの教育。この質問は大変大切なのではないかと私には思える。どういう教育を受けたので、私達は、今こういう人になったのか。そして、わたさひたちは、どういう人を作るために、教育をしようとしているのか。誰かが、誰かのためではなく、あなたが、あなたのために、それを考える、という意識。その後、裏の林に、みんなで出て、持ってきたカレーのスプーンを使って、各自自分の手のひら大の穴を掘る。穴というか皿。中に、燃えやすそうな枯れ葉や枝を集めて、今日は終了。
 授業第9回。6月19日。全開の確認のため、今日は雀を描いてみる。年上の人と、少し戦ってみるのも良いんじゃないかという話。活動は、この前の続き。ティッシュペーパーをこよりにして丸め、火種にする。マッチのスリ方。火事になったらどうするか、各自考えておく。話の後、前回の穴に各自戻って、穴の中に、小さいたき火を作れ。マッチに火がつかない。紙が燃えない。すぐ消える。息を吹き掛けられない。薪の上に火種を作る。始めから太い木に火を着けようとする。その他その他。ほとんどが着火に失敗。一応、バケツに水を汲んでおいたが、後始末すら必要無いほどの惨敗。去年は、小雨の中で、松林の中にたなびく白煙だったのだが、、、。この次は、ハムスターになる練習。