具体的であればあるほど
それは僕の話なので、
僕以外の人には、
役に立たない。

そういう話の中で、
私たちは社会を組み立てる。

2017年11月17日
薄曇り。無風の冷たい空気。

しばらく更新しない/できないでいた。最近作文の注文が幾つかあって、珍しく集中して物を考え、まとめた。そういう作業は、既に僕には慣れないことになっていて、時間がかかった。それらはどこかのパンフレットのような雑誌に載るのだが、少し書き足してこのブログにも残しておこうと思う。

一つは、そあとの庭の人たちの企画によって、仙台市内の児童館の人たちと僕がやっていることの実況中継(記録)だ。美術館でやっていた頃なら、美術館探検本物と呼ばれることになっただろう。美術をそこでその人たちと一緒に使うとはどういうことか、の具体的な展開記録だ。こういう動き方がワークショップというものだ。

おう、既に、僕の芸術的な表現はこういう形になりつつあるのかもしれないな。


さて、小さい人たちと様々な活動をやる時のコツは、きっちりと隙間なく計画を立てることではない。「何をするのか」の覚悟のようなものだけを単純明快に決めておくことだ。

例えば今回、仙台市内のある児童館の人達と、郊外にある古い神社の裏の森で「倒れるぞう!」をする。林の中にある、本物の檜の木をみんなで切り倒してみる! ね!面白そうでしょう? そこに来た人たちと「丁寧に」相談しながらそれを体験する。今回来る人は児童館に来ている小学1年生15人、2年生5人、3年生3人、4年生2人。職員4人。全体の割合はオスの方が多い。下草刈っていない林の中に入るのみんな初めて。僕が事前に知っているのはそのくらいだ。

まず最初に林の中に踏み分け道を作りながら、ゆっくり一回り。途中で、草の中でしゃがんでみたりしながら、(職員を含めた)その人たちの「普通の林の中での反応」を(僕が)観察する。それで、午前中の1時間半は終了し昼御飯。一緒に食べて、反応を見る。食後、切ることのできる木のある林に移動し、どれを切るか探す。本物は太くて大変だし、様々な理由から、(事前に、間伐材なら切ってもいいよと神主さんから許可をもらっている)時間中に切れそうな太さの木をみんなで(実は僕が)選ぶ。とはいえ、林の中にある木はどれを選んでも梢は見えないぐらい高い。みんなでよく見ながら、あそこ(梢)がここ(地面)まで倒れてくることを想像する。何人か(全員である必要はない)の女子!が、ここにいては危ないことに気づく。
4年生は、僕が木を切る手伝い。1年生は倒れる方向にロープを引っ張り、2年生も一緒に引っ張りながら1年生が倒れて来る木に踏み潰されないように見張る。3年生は4年生と2年生の連絡をする。という「(本格的)打ち合わせ」を林の中でする。この前はそこでちょっとふざける男子がいて僕に怒られ泣き出してしまったが、泣いても僕は真面目に怒り続け、本気にならないと死ぬぞと言い続ける。みんな本気になる。こうなれば人間の幼体はなんでもできる。多分本当はこれをしたかったのかな。泣いても、ふざけられないことはふざけられない、死ぬからね。
4年生を肩車して切り倒す木のできるだけ高いところにロープを結ぶ。これ(直径10センチほどの木に太いロープを回してきつく結ぶ)ができない4年生(男子。大抵、女子が代わりにしてくれる)が多くなってきているのが気にかかるが、なんとか結ぶ。ずうっと遠くで、1、2年生がロープを引き始める。3年生がまだ引かないように言う。僕が倒れる側に斧で切れ目を入れ、鋸で反対側を切り始める。お爺さん(僕のことね)はすぐに疲れて、4年生に交代。僕は少し離れて、全体の様子を見る。さっき怒られた人を見つけておく。何人も代わりながら、大人(職員)も混じって切り、1、2年生は引っ張り、倒す。最後のあたりはみんなで耳を澄ましメキメキときたら事前に決めておいた方向に飛び退いて逃げる。ね、面白そうでしょう?いや何回やっても、本当に毎回面白い。倒れた後はみんなで枝を切り落とし、何本かに切り分け、はしごを作って木登りをしたり、丸太を薄く切ってお土産を作ったりしていると帰る時間が来る。もちろん誰もやめないが、最近はすぐに林の中が薄暗くなってくるので、熊が出る前に帰ることにする(と言ってやめる、大人の都合では止め(られ)ない。

唯一決まっているのは、木を切ること。あとはそこをみんなで目指して、その時必要な作業を様々組み立てていく。ある目標を皆んなで力を合わせて履行するが、決められた成就を目指すのではないということを、リーダーが深く自覚していればいい。単純明快な目標だけを決め、細かい計画は立てず、成就を/は目指さず、経過を重視し楽しむ自覚と覚悟。

見た目は学校の授業とほとんど同じだが、関わる子供達の目は、始める前と後では全く違ってくる。その目がみんな違った目になることに大人が気付けるといいのだが。