About me

JObとしては公務員をしているけれど,意識の中での僕の仕事は美術家だ。美術家の仕事は農業など1次産業に近いと僕は思っている。一見何もないように見える土から,その中のエキスを魔法のように集めてできる大根やジャガイモや米を収穫する。常に意識している本当の仕事はそういうあたりにあって、それが見える形でのJOBが公共の美術館での教育担当学芸員。教育担当とあえて断るのは僕が展覧会を一回も組織したことのない学芸員だからで、1981年の開館以前から美術館での教育普及だけを専門にやっている。僕が知っている美学や、美術史や、美術評論は、すべて、美術館で行う教育活動というスキャンをかけて仕込まれている。簡単に言うと、僕の美術の話はわかりやすいが浅い、ということだ。知るほどに、美術は深く広い。


大学で美術を専攻するまで僕は陸上競技の中距離走の選手だった。そうならないように常に注意しているが、未だ,僕の動き方の基本形は体育会系なのではなかろうか。だからかつて、すべては競争で早い人が偉かったのだけれど,美術を始めてから,速い人に追いつかれたら,抜かせてあげればいいという事に気付いて,だいぶ楽に走れるようになった。そういうことに気付けたのも,それまで競争を一生懸命していたからかもしれない。今でも走るのは見るのも含めて好きだ。
もう一つ僕の生活の基礎に深く関っているものに「オフロード モーターサイクル ライディング」がある。モーターサイクルに乗る行為は人生と良く似ていて,困ったときの乗り越え方の様々なヒントをそこから見つけている。曲がるときは車体と一緒に体を倒して曲がる(ドライブではなくライドね)とか,登りにさしかかる前に充分な加速をしておいて,登り始めたらアクセルを「絞り」「頂上ではすっかり閉め」、下りはむしろアクセルを「開ける」とか,体を倒していても首(という事は目だな)だけは立てておけとか,その他色々。
ひょっとすると,僕の人生にとって美術はそんなに大きなウエイトをしめていないのかもしれない。美術そのものよりも,快適な人生の方が僕にとっては気になり,そういう生活をするとき,美術は大変良い相棒に思える。

基本的に移動する事自体が好きで,だから下着や靴は注意深く選ぶ。自転車は3台持っていて,モーターサイクルも一時4台持っていた。移動する事自体が好きと気付くきっかけはモーターサイクルだったのだけれど,脳内出血以来整理してしまい,今は登録上1台持っているが,それは若い友人に貸してあって,手元には無くなってしまった。
そのかわり,2気筒空冷600ccの古いシトロエンを1990年以来持っていて,天気の良い日にはそれに乗る。スピードを50キロも出せば充分スポーツだ。父親が要介護の人になったので,雨の日にも動く車を最近もう一台買った。それにはルーフキャリアを付けて阿武隈川までカヌーを運べるようにしてある。暖かい日に阿武隈川の水の上を流されながら移動する面白さも最近加わった。
屋根を開けたシトロエンで近くの山の麓まで出かけ,半ズボンに着古したネルシャツを着てビルケンシュトックを履いて,春先か晩秋の里山の雑木林の中をゆっくり長く歩くのが好きだ。できたら道から外れられるともっといい。晴れか雨かは問わず。

できるだけこういう休みの日を送りたいと思っているのだけれど,最近はなかなかそうはいかないので心筋梗塞なんかになるのだろうなあ。

Welcome


1978年の9月、その時住んでいたニューヨークから米国の永住権をとるために一時帰国した。
そうしたら,ちょうどその時宮城県では新しく美術館を作る準備を始めており、日本では初めてとなる教育普及担当学芸員を探していた。宮城教育大学の三井先生のすすめで僕はその公募に応募し採用された。高校を出た時,最も遠い職業になるだろう(何しろその頃は世界的な学生運動の嵐の後で,公務員なんて最低だ)と思っていた公務員に,僕はなってしまった。
でも,仕事は面白かった。というより,周りが、若い僕が面白がって仕事ができるようにしてくれたのだと,今はわかる。凄く良い先輩と上司に,僕は恵まれたのだ。小学校以来(僕は幼稚園には行っていない)先生や先輩には恵まれている,恵まれすぎていると言っても良い。
僕は考え学び、かつ直感で、思う存分仕事をした。大学で学んだ彫刻の作り方と同じ方法で、公立の美術館における教育普及活動を考え具体的に組み立てた。今30年が過ぎようとしているが,始めた頃とやっていることや、言っていることはそんなに大きくは変わっていないはずだ。それをやる理由は深められ、他からの分析も含め理論化されたけれど,見える/やるべき実践は同じだからだ。
だいぶ古く感じることも起きて来てはいるが,その理論から作られる,僕の実践/作品は僕の時代のものなのでしょうがないのだ。この理論を使って今の人は今の実践を作ればいい。

このサイトは、もともと「おとうさんのひとりごと」という僕の自費出版(2002年)の小さい本をみんなに読んでもらうために開いた。その本は最初700部ほど刷ったのだけれど、あっという間に売り切れてしまって自分の手元にも残らなかった。しばらく絶版のままだったのだけれど、要望が多くなって2009年に500冊だけ再版した。
左の「おとひと ON THE WEB」に跳んで読むことも出来るが、紙の本で読みたいひとは今回の出版元霧生舎 kiriu_sha@bookshelf.cc にメールを入れてもらうと一冊1000円で購入することも出来る。
*kiriuとshaの間にアンダーハイフォン( _ )がはいる。注意。

今年、僕は60歳になる。美術館も開館30周年記念だ。1月31日に、仙台文庫から僕の本が出る。これまで様々な所に書いた文をまとめた物だ。お父さんのひとりごととの延長でものを考えると実践としてはこうなるという所か。