2011年 8月 7日 暑く薄い曇り。でも、暑いの続くのしばらくぶりだから嬉しい。僕は7月生まれだ!
この前のブログ7月29日の写真に僕が写っている。玄関前の庭に折りたたみの椅子を出して娘にメールを打っている所を、2回の物干ベランダから、その日ハウスキープに来てくれていたK子さんが撮った。うしろから撮った写真を見ると、まるで自分でないように見えるが、僕以外の人にはこう見えているんだね。自分がそこにいるという自覚はあるときふわりと陽炎のように揺らいで再点検を迫る。でも、いったいここはどこのリゾートだ?
自分ではそんなに気にしていないと思っていて、聞かれた時にはみんなにもそう話していたのに、ここ何回かの文章を読み返すと、僕は毎回60歳になる、60歳になると繰り返していた。結構何か来てんのかしら。人ごとのように書いているが、来てるんだろうなあ。様々な意味と深みで、普通に人生を送る人にとって「還暦」という概念は大変上手くできたシステムなのではないかと、最近考えている。
30年同じ仕事をしていると、その仕事を巡る、社会の仕組みや動き、そしてそこでの自分の立ち位置などが、ある日突然、ピントがあってくるように見えて来る。こちらは30年ほとんど同じことを繰り返していても、回りはどんどん変化していくから、その変わらない仕事の意味が外側から変わって固定されてくる感じ。今僕が30~40歳だったら、ええい、ここからが仕事だとかなんとか、訳のわからないことを声高に叫びつつどこかへ突っ走っていきそうな気もするが、上手い具合に今僕は60歳になっていて、「ここ、仕事、訳、わかる、わからない、声高、叫び、どこ、突っ走る」などなど、すべての言葉一つ一つの概念が、複雑にしかしはっきり有機的に絡まった具体的なイメージになって僕の脳に出現する。ということが気付けるようになった。そしてほぼ同じボリュウムで、今の自分の身体と脳の動き具合、それらを使って動く自分の具体的実践的な行動も見えて、そうはしない自分を見る。静かな広い感じがして来る。そういえば今年は胞夫さんの初盆で、この次の休みの日に仏壇の掃除をしようかな、なんてことを思い出す。歳とるのはこういうことだったのだ。なんと面白い。
最後の週末から思い出せることを書いておこう。
7月の末、昨年末ヒートポンプをつけてもらったオール電化の会社と再び相談をして、この際のこの時期だから、もうあまりお金のことは顧みずに、法律いっぱいまでソーラー発電を強化することにした。今年中に僕の家は(晴れていれば)ほぼ自分の家で作ったエネルギーだけで(直接ではないのが残念だが)ほぼ動くようになる。M-SAI日光発電所。この作業を通して、日本のエネルギー政策の、表面にあまり出て来ない根本的な問題を考える/感じることができた。どちらが正しいとは決められない。ある決まりを決めるとき、その時点で最善であろうと、みんなで知恵を出し合って決めて来たことが、実際の社会についていけず、むしろどんどん陳腐になっていくことの具体例を見る思いだった。とは言え、原発を取り巻く状況含め、それが陳腐だと気付けない大人が多くなりすぎているとは言える。儲かるかどうかを基準にしてものを決めるのは凄く恥ずかしいことだ。
なかなかゆっくり会う時間の取れない若い女友達がいる。彼女は7月生まれだということがわかった。なんだ僕と同じだったんだ、では7月中になんとかしましょうと、合同誕生会を7月最後の土曜日に決行した。朝遅く仙台を車で出て、北の方にある農家レストランで野菜と玄米の昼食を食べた。帰り、その近くの山の麓のダムのほとりの林の中に、車から小さいタープを張って降り始めた霧雨をよけ、お茶を点てて飲んだ。彼女が小さな真鍮の口琴を持って来ていて、二人で遠くに見える雲の沸き立つ山を巡って、いっ曲ずつ即興で演奏した。
こう書くと、なんと素朴で馬鹿みたいなことを良い歳をした男女がしているのだろうと自分でも思ってしまうが、でも、実際にそうして、しばらくぶりの凄く充実した、リラックスした時間が過ぎた。今書いていても嘘みたいな良い時間だった。
開けて8月1日。かねてから予定していた、いつもの小学校教師有志団体との8月のノッツオ@山形市。朝8時に仙台駅集合、山形行き仙山線快速で北山形駅下車。その日の山形は、涼しくはなかったけれど全く暑くなく、全員少しホッとする。この時期の山形としては異常気象と言って良い天候、高曇り。お散歩には絶好だ。ガランとした駅前から、こっちの方に行けばたぶん近くには出るんじゃないのという態度で、あちこち寄り道しながらダラダラ歩いて、旧県庁舎へ。文正館だっけ?ああ、文翔館だ。名前忘れるなあ。という態度。今回は山形出身の人がいるので、名所案内になりかけるのをなんとか食い止めながら行く。とは言え、この辺りは地元の人でないと普段は来ない所だ。そして、山形は小さい街にぎっしりと歴史が残っていて、今でも生きて使われている感じの町だ。着くまで忘れていたのだが、そういう公共の所は、普通月曜休みだよね。だから、僕今日来れたんじゃなかったか。で、そこはもちろん休館。こういうとき地元出身者がいると有利で、すぐそこの裏通りにある大福饅頭屋へ。饅頭屋は冬だけで、夏はかき氷屋。みんなで歩道のあちこちで昔風かき氷を食う。山形は、充分に手入れされた古い家屋や町並みやお地蔵さんや、お寺や神社や何やかやが途切れなくあって、なかなか先に進めない。又これに、みんな丁寧に一つ一つお賽銭あげていくんだな。僕は、帽子とってコンニチワするだけ。12時少し過ぎという、最も混んでいる時間に、折り返し目標地点の梅蕎麦(山形出身者推薦蕎麦屋)到着。しばらく外のベンチで待って全員奥の小上がりに上がって(あたりまえだが)おいしい山形蕎麦を食う。帰りは迷い(元々迷っているようなものなのだが)ながら、山形芸工大卒業生のやっている灯蔵というレストランにたどり着くも、ここも月曜休み。いやはや。ここでも地元出身者の助けで近くのお茶屋カフェに行ってみんなでデザートのパフェを食う。一息後、寄り道をしながら(山形は仙台の一番町みたいな繁華街の中に新たな蔵屋敷通りのような場所を贅沢に作っていたりする)山形駅へ。1時間に1本しかない仙台行き仙山線なので、最後は少し慌てながら乗って(帰りは各駅停車だった)帰仙。僕はそのまま常磐線に座って帰ったが、元気な先生達は駅の中のビアホールで乾杯を2杯して解散したと、後で聞いた。
山形市内のほとんど人通りのない裏町の十字路で、地図を拡げながらどちらに行こうかと話を始める(我々は決して迷っているのではない)と同時に、どこからともなく(たいてい)自転車に乗ったおばさんが寄って来て「どうしたの?大丈夫?」と聞いて来る。そして大変詳しく(ほとんどよけいなことまで)教えてくれる。ありがとうございましたと、僕らがぞろぞろ移動し始め数ブロック進んで振り返ると、たいていまだ見守っていてくれる。何人かは自転車に乗っていない、ということは、いっぺん家に着いて再び歩いて見に出て来たのだ。なんという街なのだろう。山形の人って全体に美人が多いと思っていたが、そうか、こういう風にして本当の美人になっていくのだなあ。皆で行くノッツオはいつも新たな視点が広がるが、今回も様々感慨深いノッツオ(野走)だった。
翌2日、生活文化大1年生60名に美術探検。友人の瀬戸君の生徒。だからというわけではないが大変熱心な人達で2時間ぎっちり常設展示室で絵を見ながらお話。終わると立っていられない程疲れるけど深く嬉しい。良い質問をしにくる学生が終わってからもいた。嬉しい。
次の3日、10時から4時まで昼休みを挟んで、美術館レストラン/コーヒーショップ出店希望者プレゼンテーション。面白かったけれど、居眠りするわけにもいかず、若干へばる。向こうのペースで進む活動は僕を心から疲れさせる。でもとにかく心も頭も休む暇のない時間だったが面白かった。世の中にはいろいろな人が一生懸命生活をしている。この中から一社だけ選ばなければいけないのが残念だ。
4日。予約されていた多賀城のある幼稚園の子供アトリエとの純粋充分な美術館探検。小学校低学年(OB,OG)数名を含む、幼稚園の人達と親。初めはみんな緊張していたけれどゆっくり丁寧に動いて行くとどんどん顔が変わってきて、最後は皆で小さい木の舟を造って終了。解散前のまとめのお話の時僕の膝の上に自然に座っていた男の子が一人。解散してから丁寧に挨拶をしにきた家族が2組。良い活動だった。
5日。仙台市小学校図工部会夏の研修会。事務局の人達との打ち合わせ時、とにかく先生達は準備をしすぎるのが問題だから、今回は何も用意をせず、出たとこ勝負で授業(活動)を組み立てる所から公開しよう、ということにしていた。いつもはせいぜい集まって30名前後の集まりだ。今回ふたを開けてみたら、109名来た。なんなの皆な?一応塗りつぶしをするつもりで各自好きな鉛筆と紙(B5一枚)を持ってくることにはしてあったので、参加者と相談しながらフロッタージュに変更。でもせっかく大人が美術館でするんだから、出来るだけ平らに見える所の擦り出し。床とか机とかの広い表面。5人一組で繋ぎ合わせて平面として提出、という活動。2時間ぎっしり。僕は面白かったけれど、参加者もなんだか興奮満足に見えた。教師側でなくそっち(生徒)側に主体を置いた教育の視点。やる方もやらされる方も簡単安心で深い活動になる。
さすがに、6日7日は予定された活動なし。でも、個別に深く簡単に考えてはいけない相談あり。今日は早く寝ようと思うのだが、テレビで面白い映画がある。そして明日月曜は本来休館の所、七夕開館で出勤。代わりに火曜休館なのだが、その日は明美さんの病院に朝一で診察予約してある。それが終わったら、胞夫さんの初盆だ。やること次々あって嬉しい。本当かな?